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 来る者拒まず、去る者追わずな咲はお付き合いをした女性は数知れず。途切れることなく生きてきたが、最近は仕事に集中したいと断っていた。
 だから咲は経験豊富な方であり、キスは何度もしてきた。が、「男と」という点ではある意味初キスである。
 男同士だというのに嫌悪感は全くなかった。むしろ奥底に燻る何かが「もっと」とねだるのだ。


「…一体、何だっていうんだ」


 自分じゃない何かが白藍を求めてむせび泣いている。そう、男の真似をするなら「魂」が求めているような、そんな感情。
 理解し辛い胸の内に、咲はギリリと歯を噛み締めて立ち上がった。抜けていた腰は最早主の命令を聞こうとしないが、無理やりにでも歩き出す。
 目と鼻の先にあるはずのマイホームが、地の果てにあるかのように思えた。

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