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「例えばそれが本当だとして、貴方は一体私に何を望むというのですか」


 御尤もである。突然現れて咲の唇を奪い、挙げ句の果てに「花嫁になれ」とはどう考えてもおかしい。
 白藍にも咲にも利益が見当たらないのに、男は真剣なのだから余計に混乱を呼ぶ。


「…俺は生を受けたその時からサクを待っていた」


(よく、分からない)


 咲は益々顔を顰める。望んだ答えは返ってこなかった。レポートに纏めて提出してほしい、などと思いながらも腰に回った腕をやんわりと引き剥がす。
 それほど力の入っていなかった筋肉質な腕は大した苦労もなくすんなり離れた。


「どうして私なのですか」


 未だに頬に添えられた骨張った大きな手が、咲が離れることを許さない。裕に頭一つ分以上高い白藍を見上げるのも、そろそろ首が痛くなってきた。


「魂が欲しているからだ」


 また理解し難い返事が返ってきたものだ。魂とは一体どういうことなのだろう。
 眉を潜めた咲に気付いて白藍は再び声を発する。

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