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 聞きたいことがありすぎて考えがまとまらない。咲は容赦ない白藍の威圧感に細く息を吐き出し気を紛らわせる。


「私は、男ですよ?」
「知っている」


 なら何故花嫁などと戯れ言を吐くのだろうか。からかわれているとは思えない。
 直感でしかないが、不思議と白藍は嘘をつかないと確信に似た思いを抱いていた。
 深い青の瞳を見つめる。何を考えているのかを見極めようとするが、さっぱり分からない。これほど感情が読めないことは初めてだった。ピクリとも動かぬ冷たい表情と読めない目に、咲は恐怖に体を震わせた。


「貴方は…何者、ですか」


 人間ではないのは分かりきっている。ならば、一体何者なのか。核心をつく咲に、白藍は僅かに目を細めた。


「鬼だ」
「…鬼?」
「嗚呼」


 躊躇すら無く断言した男を、疑心で見上げる。しかし、嘘を言っているようには見えないし、更には額に生える角が言葉を真実だと物語っていた。
 信じるという選択肢しか咲には残されていなかった。苦渋に満ちた表情で、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

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