05



 カタリ、とキーボードを打つ手を止めて画面をクリックする。咲は小さく息を吐いて眉の付け根を指で押さえた。


「…んー」


 腕を頭上で組み体を伸ばす。体の関節から良い音がなり、肩が軽くなったのを感じながら周りを見渡した。
 オフィス内は物音すらしない。咲以外の人間がいないから当然だ。
 あれから二時間程度朝貴に手伝ってもらったものの流石に最後まで付き合わせる訳にも行かず、残ると言って聞かない彼を上手く言いくるめて帰らせた。
 時計は既に12時を過ぎているのを確認し、咲は目薬をさした。
 デスクワークを仕事にしているとどうしても目が乾いてしまう。不思議と視力が低下することは無いのだが、ドライアイになっているのは間違いないだろう。この調子だと1.0を保ってきた視力も悪くなる可能性があるな、と咲はぼんやりと頭の隅で思う。
 一分ほどボーっと意味も無く天井を見つめてから立ち上がった。印刷の完了した紙を手に取り、鞄に突っ込む。窓に鍵がかかっている事を確かめてオフィスを出た。

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