「なら手伝います。それなら良いでしょう?」
それに、ここで咲が朝貴に書類を押し付けたなら、それは朝貴が惚れた咲ではない。融通のきかない愛しい彼を、甘い言葉で絡め捕る。
そうすれば咲は眉を下げて困った顔をすることも、朝貴はよく知っていた。
「じゃあ、お願いしようかな」
「はい」
にっこりと頷いた目の前の部下に、咲は小さく溜息をついた。揚げ足をとられるというか、なんというか。一枚上手な後輩に苦笑せざるをえない。
「…君には負けるよ」
「ありがとうございます」
褒めてはいないんだけどね。そう思いながらも蕩けるような笑顔を浮かべる朝貴に笑んだ。
さて、気合を入れなければ。この分だと日付が変わるのは決定事項だ。手伝いを申し出てくれた朝貴には悪いがとことん付き合ってもらうこととしようではないか。
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