05



「そうよね、みぃちゃんも寂しいわよね」
「私も寂しいさ」
「父さん」


 先程の威厳のある雰囲気はどこかへ吹っ飛び、父は顔を歪めて雅を抱きしめる。それにムッとした兄が父と母を引き剥がし雅を抱きしめた。
 雅はパチクリと目を瞬かせるが、兄と目が合えばほにゃりと頬を緩ませた。


「時雨兄さんもいるから、大丈夫だよ」
「ああ、俺もいる。心配は無用だ」


 父母は恨めしげに兄を見ていたが、すぐに微笑んだ。


「そうね、時雨がいたら大丈夫ね(不本意だけど)」
「そうだな、時雨がなんとかしてくれる(不本意だが)」


 兄は()内の言葉を聞き取り睨みつけるが、当の本人は聞こえているわけもなくふわふわと笑った。その愛らしいことと言ったら。


「ああ、そうだ。千尋君も一緒だからな」
「え、ほんと?」
「はい。ご一緒させていただきます」
「やった!」


 千尋は無邪気に笑う雅に破顔した。第三者がこの場にいたならば「デッロデロのメッロメロじゃん」といった心情になることは間違いないだろう。
 父母vs兄に千尋、そして無邪気に笑う本人。つまりは、雅コンプレックスの集団であった。

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