02



「…あさ?」


 雅はゆるりと体を起こす。その際に僅かに乱れた和服の襟元から除く白い肌は魅惑的だ。程よくついた筋肉が美しく、更には鎖骨に青年は釘付けになる。寝起きだからか、いつもは鋭い目がトロリと蕩けており、目元にある泣き黒子に青年はクラリとするが必死で耐える。
 ほんの少しだけ開いた薄い唇から覗く赤い舌が追い討ちをかけた。フェロモンの塊である雅はゴクリと唾を飲み込む青年には気づかずに欠伸を漏らした。
 頭上で手を組んで体を伸ばし終えた雅はパチリと目を開けて青年に体を向ける。


「…おはよ、ちーくん」


 ほにゃり、と雅は表情を緩めた。先程まで駄々漏れだった色気は息を潜め、その柔らかい笑みに青年、中条千尋は存分に癒された。
 何を隠そう、誰をも羨む硬派男前である雅はその見た目に反して中身はおっとり癒し系であった。


狼は羊でした


(…癒される…)
(ほへ?)

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