01



 決して染めたことのない艶やかな黒髪。スッと鼻筋の通った高い鼻。切れ長の漆黒の瞳。体格は見た目に反して細身で、言うなれば細マッチョ。


―――男前。


 そうとしか言いようがないほどに彼は美形だった。それも、着物が似合いそうな生粋の硬派な男前。
 実際、彼は由緒正しき呉服店の息子であり現在総締めである父と、それはそれは有名な茶道の家元を継いだ母を持つ彼は普段着は専ら和服である。

 そんな彼、早乙女雅は今日も和服を着てスヤスヤと眠っていた。純和室である彼の部屋(と言ってもこの屋敷では全て和室である)に一人の青年が襖を開けて静々と入ってきた。
 青年もまた和服をキッチリと着こなし、その上、彼に負けずとも劣らないほどに美形である。彼とはまた違う系統の美形で、ワイルド系だろうか。青年もまた和服が似合っている。


「雅様、起きてください」
「…ん」


 眠っている雅の耳元で囁く。それは第三者にしてみれば恋人を相手しているかのように甘い声音で。

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