その様子を見守っていた千尋が意を決して口を開く。
「雅様がこの学園で過ごす上で、知っていただきたい事がございます」
険しい表情をする千尋に思わず背を正す。
「幼小中高大一貫の全寮制の学校であることはご存知ですよね?」
コクリとうなずいた雅に話を続ける。
「男子生徒しか存在しないこの学園で、思春期を過ごすことになります。ハッキリ言いますが、男同士の恋愛がここでは普通です」
すらすらと述べられた内容に雅は驚くが、すぐさま納得する。確かにただでさえ性に敏感な年頃に、相手となる女がいなければ男に向くというのは当たり前の話だ。
そういう性癖に対して嫌悪も何も無い雅はどうも思わない。
「ここまでは大丈夫ですか?」
と尋ねる千尋に軽く頷いて肯定の意を示した。
「問題は、その恋愛対象…いえ、性的対象に雅様も含まれるということです。申し上げにくい事なのですが性的暴行が少なからずある場所です。襲われる可能性があるので、出来る限り私や時雨様で守りを固めますがご自身も警戒なさってください」
自分を襲うなんて稀有な人物などいないだろうと思ったものの、尋常ではない千尋の必死の形相に気圧されて首を縦に振った。時雨に強制的に任された重要な任務を済ませた千尋はほっと息をつく。
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