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「―――兄さん、入って良い?」
「ああ」


 自分の部屋であるのに律儀にノックして入ってきた雅に微笑む。
 現れた雅は和服に身を包んでいて、風呂上がりで暑いからか少しはだけさせた襟の合間から覗くほんのりと色付いた肌と、同様に頬を上気させ髪から雫を滴らせていた。
 壮絶な色気を放つ雅に動揺するでもなく、時雨は手招きして隣に座った雅の髪をタオルでわしゃわしゃと遠慮なく拭く。乱暴ではあるが優しさを感じるその手を大人しく甘受して、雅は気持ち良さそうに目を閉じた。


「無防備すぎ」
「んー…?」


 擦り寄ってくるのは無意識だろうか。それにしても、と時雨は苦笑する。
 時雨にとって雅は「猫っ可愛がりたくなる弟」であるが、この学園の生徒達はそうもいかないだろう。愛でるだけで終われば良いのだが、対象として見られてしまうのは目に見えている。
 どう本人に自覚させようか、と考えている間に黒髪はすっかり乾き、雅は舟を漕いでいた。

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