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「―――此処が雅の部屋だ」


 1093と書かれたプレートが掲げてある部屋の前で足を止めた。時雨はポケットから取り出したカードを機械にスライドさせると、カシャンといった機械音が誰もいない廊下に響いた。


「雅のカードは理事長が持ってるはずだから後で取りに行こう。カードは学生証明書であり、寮部屋の鍵であり、財布だから絶対に持って外出するように」
「誰のカードでも開くの?」
「いや、俺のは特別にブラックカードだからな」


 ブラックカード?首を傾げる雅に「後で説明する」と言って時雨は室内に押し込んだ。
 誰もいないからといってこのままにしておく訳にもいかない。いつ誰が通りかかるか分からないし、それに風邪もひかせたくないのも本心だからだ。


「とりあえず奥にバスルームがあるから温まりな。必要な物は出しておくから」


 雅は大人しく従って奥に進む。一部屋ずつにバスルームがついているなど、寮というよりはホテルのようだ。そんな感想を持つ。
 一方時雨は左右のドアの前で悩んでいた。片方はもちろん雅の部屋だが、もう片方は同室者だ。結局、悩んでいても仕方が無いので時雨は勘に従って左のドアを開けた。

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