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「…迷子か?」


 この泉へと来る者はほぼ皆無と言ってもいい。故に息吹の息抜き場となっているのだが、ここに来る者と言えば迷い込んだとしか思えない。
 それに学園で雅を見た覚えがない。これほどの美形ならば騒がれるに違いないだろうに、噂さえ聞かないということは編入生なのだろうと目星をつけた。


「…道が、消えたんです」
「雅、無理がある」


 "迷子"という言い方にムッとした雅が苦し紛れに言葉を吐き出した。その科白に息吹はクスリと笑う。
 雅も流石に羞恥を覚えて顔を赤らめる。息吹はもう一度小さく笑って踵を返した。


「案内する。何処に行けば良い?」


 一度瞬きをした雅は遠くなっていく背中に我に返って、小走りで息吹の後へと続いた。パンフレットの地図を見せて指さした雅に頷く息吹。


「ありがとうございます」


 ふわりと微笑んだ雅に、息吹もまた目元を緩ませたのだった。

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