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「どうした?」
「…お邪魔、してしまったようで。ごめんなさい」


 予想外の言葉に息吹は瞬きを繰り返す。その間約5秒。
 何も言わないのが気になってそろりと顔を上げた雅に、息吹は漸くああ、と思い至った。同時にそんなこと、とも思ったが。
 息吹は涼やかな目元を僅かながら緩めた。


「構わない」


 見上げてくる雅がどうしても怯える小動物にしか見えなかった息吹は口元を緩めて艷やかな黒髪に手を伸ばした。
 雅は自分に伸ばされた手に一瞬びくりと体を震わせたが、ぽふぽふと優しく頭を撫でてきたと思うとすぐに身を委ねた。見た目通りに柔らかな髪を梳きながら息吹はゆるりと微笑む。


「雅なら、良い」


 大きな手の心地良さと優しい声音に瞳を伏せた。思いの外長い睫毛が白い肌に影を落とす。息吹は雅の目元をくすぐって、ふと思ったことを尋ねてみた。

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