「んー」
大和に道順を教えてもらった後、雅は迷子になっていた。別段方向音痴という訳でもないのだが「噴水きれー」だとか「あ、ちょうちょ」だとか言って意識が逸れる故に道に迷ってしまったのだった。
ぐるりと辺りを見渡してみれば、木々が覆い茂っている。どうやら森であるようだ。どうして学園に森があるのだろうか、と雅は首を傾げたものの結局分からず仕舞。
「獣道…」
ふと細い獣道を発見した雅は誘われるままに歩き出した。しかし奥に進むにつれて段々と光が入ってこなくなっていく。
心中で間違えたかも、と呟きながらも今更引き返すことも出来ずにそのまま真っ直ぐ獣道を辿ると。
「―――ふわぁ」
一瞬にして拓けた視界一杯に広がる小さな泉に雅は目を瞬かせた。泉の近くに寄れば、透明度が高いらしく底まで見える。
夢中になって泉を覗き込んでいたせいで、近くに人がやって来たことに気がつかなかった。
「おい」
「ぅにゃっ!」
ザッパーンっ
唐突に声を掛けられた雅は、足を滑らせて泉の中へと落ちた。咄嗟のことに反応しきれずにそのまま泉の底へと落ちていく。
水の中から見る景色はキラキラとしていて綺麗だなぁ、なんて呑気なことを考えていると、腕を掴まれて体を引っ張り上げられた。
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