「パンフレット持ってる?」
「あ、はい」
雅は前もって手にしていたパンフを大和の目に晒す。
「この噴水前に案内の人がいるはずだから」
パンフレットに載っている簡易地図のある一点を指差す。雅はふんふんと頷きながら地図を覗き込む。
「門はこれですよね?」
「そうだよ」
長い指で示された場所に大和は頷く。
「分かりました。…あ」
雅はふと思い出したように小さく声を上げた。それを怪訝に思う大和を前に、雅は恐る恐る見上げた。
「あの、良かったら携帯とか」
「―――」
「大和さん?」
それほど身長差は無いものの、雅は僅かに上目遣いになっていた。その仕草に心臓を抉られたような感覚に陥ったのは言わずもがな。
「あ、いや。こちらこそよろしく」
ハッと我に返った大和は慌てて取り繕う。不安げに瞳を揺らしていた雅は一瞬にして花開く。
「よかったあ」
(嗚呼、なんて)
可愛らしさにクラクラとする頭を押さえながら大和は唸る。
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