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「分かってるよ、全部。…すべてを受け止めるから」
凪いだ俺の心とは対照的に傷ついた夏哉の心。どうしようもなく好きだな、と思いながらゆっくりと大きな体躯を抱きしめた。といっても抱きつく形になってしまうだろうが。
「なぁ」
「………?」
夏哉も震える腕で縋るように俺を抱きしめる。ゆっくりと目線を合わせて小さく笑った。
「一つだけ、願いがあるんだけど」
「何?」
今から俺が言う事に驚くだろうなぁ、と考えつつも唇で言葉を紡ぐ。
「―――俺を抱いてくれ」
「!?」
夏哉は思いっきり飛び退いた。おお、予想以上の反応だった。少し面白くてクスクスと笑う俺を夏哉は凝視する。
「波瑠、どういう事か分かってるの」
「分かってるよ」
もちろん。これだけ言って分かっていない方が馬鹿じゃん。そう言った俺に夏哉は「そうだけど」と渋い顔をする。
先程まで浮かべていた笑みを消してじっと夏哉を見つめると、そんな俺の纏う雰囲気がいつもと違う事に気付いたのか夏哉も俺を見返してきた。
「…塗り替えてくれ。お前に愛されている事を身をもって知りたい」
「それが、波瑠にとって辛くても?」
「それがお前の…夏哉の愛なら」
自分でもかなりクサい事を言っている自覚はある。それ以上に男のプライドをかなぐり捨てて「抱け」と言う事は恥ずかしい。でも、それが夏哉なら良いんだ。夏哉だから、良いんだ。噛み付くようなキスを体感しながら、俺は目を瞑った。
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