19
肩に顔を埋めた夏哉が苦笑するのが分かった。それと同時に震えていることも。
「こんな俺でも許してくれる?」
「許すも何も、夏哉は夏哉だろ!」
悲痛な声に俺は思わず叫んだ。俺は現実に戻り焦点がしっかり合っている事に気付かぬまま言い放つ。
「俺は夏哉が夏哉だから好きなんだ」
自然と溢れ出す涙は何の涙なのか。手島に襲われた時に気付いた感情がポロポロと溢れ出す。
「好き、好きだ。夏哉が好きだ」
泣きじゃくる俺に夏哉が動く気配がした。
「好き、好き…んぅ」
言葉を呑み込むようにして口付けられた。意識を失う前のような啄むキスではない。熱い何かが唇を割って入り込んできた。
俺はなすがままで、離された頃には息があがってしまっていた。激しいキスの余韻でトロンとした目をしている事を自覚する。
「俺も好きだ。愛してる、波瑠」
優しくて甘い瞳に逸らそうとすれば、頬に手を添えられて強引に戻される。
今更だけど、俺はなんて事を言ってしまったんだ。恥ずかしすぎて死ねる。みるみる上がっていく熱を感じた。
「さ、さっきのは忘れてくれ」
なんたる失態だろうか。無かった事には出来ないのか。夏哉が好きだと気付いたからといって、あんな言い方は無いだろう。
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