18



 ぼんやりとした視界に映ったのは見知らぬ高い天井。此処はどこだと考える前に、記憶がフラッシュバックする。そうだ、俺は拉致されて…汚された。


「っあ゛ああぁ」


 目の前が一瞬白く弾けてあの光景が蘇る。狂気が滲んだ瞳が淫猥に細めた手島に触られた感触に肌が粟立ち髪が逆立つ。
 気持ち悪くて肌を掻き毟った。悲鳴をあげながらも、冷静な頭の片隅で自分が壊れかけている事を悟る。
 俺は狂いかけているのだと、そう思ったものの止める術もなく見開いた目からボロボロと涙が零れる。


「―――波瑠っ!」


 誰かに腕を掴まれて拘束された。誰かだなんて分かりきっている。夏哉だろう。分かっていても焦点が合わない。


「離せ、離してくれっ」
「波瑠、大丈夫だから」


 夏哉は暴れる俺を押さえつける。嫌だ、触らないでくれ。発狂しているのかしていないのかさえ自分で区別がつかない。


「汚れるから!」
「いいよ」


 ぎゅうっと強く抱き締めて答える夏哉に抵抗するのを忘れた。いいって一体どういう事?


「いいよ、波瑠が汚れてるって言うなら俺の方がもっと汚れてる」
「そんなこと」
「ある。波瑠と会うまでは来る者拒まずだったから」

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