「…波瑠」
「っ!ヤだ、離せよ!!」
夏哉に優しく抱きしめられた。やめてくれ、俺は汚れてるんだ。夏哉まで汚してしまう。駄目だ、駄目だ。夏哉は綺麗なままでいてほしいんだ。俺のせいで汚れるなんて、そんなの俺が俺を一生許せない。
「離してくれ…」
「波瑠」
「離せ。俺は汚れてるからっ」
「波瑠、大丈夫だ。波瑠は綺麗だ」
宥めるような声に、それでも厚い胸板を押し返そうとする。何で、何で。俺は汚いのに。
「…何で綺麗だなんて言うんだよ」
抵抗を止めた俺に、夏哉は上着を着せてくれた。夏哉の匂いに包まれて、抱きしめられているような気分になって安堵する。
「…波瑠」
「ん、」
まだ少し肩を震わせる俺に、夏哉は触れるだけのキスをした。そっと抱き上げられて俺は目を閉じた。
全てを遮断するように意識を失う直前に「好きだ、波瑠」という夏哉の声が聞こえたような気がした。そんな都合の良い話、あるはずもないのに。
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