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「…ハジメテ、なんでしょ?優しくしてあげるヨ」


 耳につく水音を存分に響かせ、漸く離した唇の間に光る糸が見えた。今、俺と手島がやっていた事をそれが表していて、俺は絶望に顔が歪んだ。


「なァに?怯えたの?可愛いねぇ」


 今から何をされるのか。明確に理解して、けれど体が動かなかった。虚ろな目で手島を見上げる。


「堕ちればいいヨ。ここまでおいで」


 狂気が滲む暗い底なしの目から逸らすことは、許されなかった。手島は俺を押し倒し、笑う。
 恐怖と絶望と激怒と憎悪、色々なものが混じる色を宿しながらも体を動かすことは出来ない。
 どうして、動かない。何故、動けない。俺の脳は運動伝達することをやめてしまったのか。


―――いや、違う。俺は俺自身に絶望したのだ。俺自身に恐怖を感じ、絶望し、激怒し、憎悪が込み上げる。夏哉以外に触れられたことへの。


「ね、抵抗しないの?」

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