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「さて、用事は終わった」


 妖しく歪められる唇の形を朦朧とする視界の中に捉えながらも睨みつける。俺にとっての精一杯の抵抗。
 しかし、それも無駄に終わるどころか、相手の目つきが更に鋭さを増した。熱を孕んだ視線に射抜かれる。
 流石の俺もその意図には気付かされる。男なのに、と思う暇など与えさせずに手島は俺の顎を掴み無理やり上を向かせる。


「…はっ、趣味悪いな」


 手島に吐き捨てるように言い放つ。ニタリ、と口角を上げるその様にどうしようもなく恐怖に駆られた。けれど負けるわけにはいかない。


「そういう態度が俺の加虐心を煽るんだよォ?」
「っあ゛あぁ」


 顎を持っていない方の手で首を絞められる。ゆっくりと力を加えられることの苦しさに生理的な涙が滲む。それでも俺は手島への睨みを緩めることは無かった。
 そんな俺を見て心底愉しげに笑う手島に肌が粟立つ。


「本当にイイ顔するよねェ」
「だ、れが…!!」
「ふふ、かーわい」


 歪んだ笑みが近くなる。目元に触れた柔らかい感触にゾっとして突き飛ばそうとするが、やはり力では敵わない。くそ、どうしたらいい。俺はどうすれば…―――


「っ!?」


 俺の唇と奴の唇が、触れた。呆然とする俺に構わず手島の舌が差し入れられる。

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