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「…名前」
「ウン。知ってるよ?鷺沼高校1年2組17番。成績普通、運動普通」


(―――嗚呼、厄介だ)


「―――黒木夏哉の、唯一の友人」


 歯軋りする。男、手島は俺の顎を持ち上げて不気味に笑った。


「良い餌になると思わナイ?」


 ねぇ、金谷波瑠。そう低い声音で言われたと思ったら、顎を掴む力が強くなった。


「ぐっ」
「苦しいネェ」


 痛みに生理的な涙を浮かべながらも睨み付ける。そうすると手島は自身の唇を舐めた。


「そういう表情、そそられるなァ」
「っ、ガハッ」


 ようやく手を離した手島に、俺は咳き込む。


「まぁ、まずはお電話しないとネ」


 手島が持つソレに目を丸くする。


「俺の!」
「そう、君のケータイ」


 手島が何をするのか。容易く想像出来て、俺はザァッと青褪める。


(夏哉を此処に呼び出すのか!)


 つまり俺は―――人質。


「やめろ!!」
「そうもいかないんだヨ」


 叫ぶ俺を横目に、手島は笑いながら携帯を耳に押し当てる。


(出るな出るな出るな…夏哉!!)


Prrrrrrrr...


「もしもしィ?」
『テメェ誰だ』
「手島だよォ。覚えてるカナ」


 目の前が真っ暗になったような気がした。それくらいに俺は絶望に染まった。
 いつだって、夏哉は俺の電話やメールに応答が無かったことはなかった。それが裏目に出た。

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