―――バシッッ
「っつ…!」
頬を思い切り叩かれた衝撃で強制的に意識を引きずり出される。じくじくと痛む頬に眉を顰めながら視界に入ったのは、見覚えのない一人の男。
「―――やぁ、お目覚めかい?お姫様」
にんまりと口角を上げるその人物が吐く言葉に棘が含まれていることに潔く気づく。必死に状況を把握しようとして、思い出す。この男に薬を嗅がされたことを。
「誰、お前」
兎にも角にも、出来る限り状況把握に努めよう。俺は真っ直ぐに男を見上げながら、視界の端で場所を確認する。
全く知らない光景。どうやら倉庫か何かに連れ込まれたようだ。地面に座らせられた状態で、ギリリと腕を拘束する縄が軋んだ。
「手島。手島司だヨ。…金谷波瑠クン」
うっそりと細められた目に宿る狂気に身震いする。この手のタイプは危険だ。冷静さを失わないままに狂っている奴は大体計画犯だから。
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