08



「―――…おまたせ、」
「ああ」


 今日も学校からの帰り道、3人組の不良に喧嘩を売られていた。相変わらず恐ろしく強い夏哉は最後の一人を一発で沈めて爽やかな笑顔で俺に振り向いた。
 もちろん俺は傍観体制だ。喧嘩はあまり出来ないし、夏哉に売られた喧嘩でもあるからな。夏哉は俺の手から自分の鞄と俺の鞄を取った。
 どうして俺の鞄まで、とは思うがこれももうすでに習慣なのだ。周りから変な目で見られるのも、嫉妬の目も、全て。夏哉は美形で、その隣にいる俺は平凡で。嫉妬されるのは当然なのだが、それでも時々辛い時もある。視線を背中に痛いくらいに感じながら横に並んで歩く。


「なぁ、」
「…ん?」


 ふと思った。俺と夏哉はいつまでこのままでいられるだろうか。いつまでこの関係が続くのだろうか。いつか俺は夏哉に切り離されるのだろうか。未来で俺と夏哉は隣にいるのか?
 …本当に?一緒にいるのか?それぞれ別の道を歩いているかもしれないじゃないか。
 そもそも夏哉と俺は世界が違うような気がする。不良である夏哉が夏哉であるための居場所で、俺は平凡でなければ俺ではない。
 いつか夏哉にも大切な人が出来て、その時にはもう俺は隣にはいないのかもしれない。否、いないのだろう。隣にいるべきなのは俺じゃない。
 そう考えると何故か急速に悲しさが増した。悲しい、辛い、苦しい、寂しい。ああでも、それが未来のあるべき姿なのだろう。
 抗えないのだ。抗えやしない、俺は無力だから。どうしようもない考えがグルグルと渦巻く。どうしたのだろうか。今日の俺は可笑しい。

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