「あ、」
「姫!」
「白雪姫だ」
「今日も可愛いなぁ」
「総括様…」
「麗しいね」
ザワリと揺れる空気。生徒が交わす言葉の中の「白雪姫」という単語は、冬の名字から取った呼び名である。
冬は学園の廊下を歩みながらニコリと笑む。可愛らしいその表情に皆うっとりと見惚れる。
(―――騙されやすいものだね)
愛らしい笑みの下で冬は吐き捨てた。しかしその笑顔は完璧で、隙はない。
「―――総括様!」
「…どうかしましたか、北君」
仮面の下で舌打ちをする。
(―――また面倒事か)
面倒事がこの上なく嫌いな冬は内心で盛大に毒づく。そんなことを知るはずもない北撫子は小走りで冬の元へと向かう。切れた息を整えながら、撫子は男にしては随分と可愛らしい顔を歪ませた。
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