思うは、先程の電話相手。強姦やリンチなどを簡潔に伝える人間。
このやり取りを繰り返して約丸1年が経とうとしていた。男はずっと狙っていた。それこそやり取りを始めてからの年月の間ずっと。
これほどに執着を見せたことのない男にとって、冬は唯一にして絶対だった。しかしどれだけ口説こうとも電話でしか冬は取り合ってさえくれないのだ。手強い相手だ、と呟くがそれもまた面白いと思っているのがこの男であったが。
「…楽しみだなぁ?」
男は口の端を持ち上げ、滅多に見せない笑みを浮かべた。男の瞼の裏に浮かぶのは一人。どこまでも黒く美しく何に対しても反応を見せぬ愛しい人間。
男、狩矢明は楽しげに笑った。
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