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「…あきら」
「!」
「ありがとう。僕を好きになってくれて…諦めないでいてくれて」


 慣れない名前を舌先で転がした。柔らかく笑んだ冬に、明は優しく唇を重ねた。
 ただ触れるだけのキスは、そこからじわりと幸せが伝染するように冬の心を満たした。
 雪を忘れた訳ではないし、雪がいなくなった後も穴が空いたままだけど、それを優しく包んで生きていきたい。この愛してくれた唯一の彼と生きていきたい。
 彼に怪我をさせた自分を許す事は一生出来ないだろう。罪悪感もある。また傷つけるのではないかという不安も拭いきれない。


(―――それでも、一緒に歩いていきたい)


「君が君で良かった。君を好きになって良かった」


 明はたまらなくなった。胸が一杯になり、言葉が出ない。歓喜に震える唇で声を紡ぐ。


「愛してる、冬」
「僕も愛してるよ、明」


 夢みたいだと思う。ひたすらに追いかけてきた存在。心の底から笑って欲しい、俺に笑いかけて欲しい、と。その願いが今叶ったのだ。
 好意を示せば好意が返ってくる。それがどれほど幸せな事か。冬と明の瞳から、一筋の光が零れ落ちた。

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