「あのね、僕のせいでまた人が怪我したんだ」
ぽつりぽつりとつぶやく声は無駄に広い室内に反響する。相変わらず焦点の会わない目から光るものが溢れ落ちた。
「雪がいなくなったあの日、もう二度と大切な物をつくらないって誓った」
冬の言葉に悠はぎゅうっと胸を絞られた。失う事の恐怖を、たった10歳だった冬は知ってしまったのだ。足元から崩れ落ちるような感覚がしただろう。
最早自分の体の一部であり、自分の生活そのものだった雪を失った事で酷い絶望感に苛まれたに違いない。そうして誓った事は、あまりにも辛く悲しすぎた。
「でもね、一人だけ居たんだよ。拒絶する僕を追いかけてくる人が」
声で、態度で、体で拒絶した。関わるな、と。放っておいてくれ、と。
それでも、何度も何度も向かってきた彼はいつも真剣で、自分を真っ直ぐに見てくれて想ってくれた。
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