「―――親父か」
「私だと駄目なのかい?」
意図的に寂しそうな顔を作る翠里を無視して明はぐるりと辺りを見渡す。自分が欲している存在がいない。
「白神は」
「帰ったよ」
もう会わないような雰囲気だった。明はその言葉を聞いた瞬間勢いよく起き上がった。傷口が傷んだがそんなものを気にする余裕等無かった。
「詳しく教えろ」
「はいはい」
そう来ると分かっていた翠里は諦めたように苦笑した。そして全てを話せば。
「俺」
「三日は大人しくしてないと駄目だよ?」
今から出てくる、と続く言葉を遮られてムっと黙った。
「ああ、でも」
思いついたように翠里が言う。わざとらしさに明は眉を寄せた。
「明日の午前中は外せない仕事があるから、逃げ出さないように」
翠里の真意に気付いた明はゆっくりと頷く。
「ああ、分かった」
「それまでは体を休めなさい」
体が辛いのは事実なのでベッドに寝転がり明は目を閉じた。
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