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 冬は手術中と書かれたプレートを見る。翠里もつられてそれを見た。
 するとタイミング良く点灯が消え、扉が開いて中から移動用ベッドに横たわった明が出てきた。ベッドを押す看護師がにっこりと笑んだ。


「成功ですよ。急所も外れていましたし、血もあまり流れていませんでしたから。二週間程で退院出来るでしょう」
「ありがとうございます」


 翠里が立ち上がり礼を言う。冬も倣って頭を下げ、明を覗き込んだ。顔色はまだ白いが、規則正しく胸が上下している事にホっと表情を緩める。
 そしてすぐにそこから離れて出口へと体を反転させた。


「どこに行くんだい?」


 慌てて声を掛ける。冬は足を止めたが振り向かなかった。


「…僕は、彼に会わせる顔がありませんから」
「明の怪我は君のせいじゃない」


 冬は何も答えずに再び歩きだした。何を言っても無駄なのだと悟った翠里は口を噤んで後ろ姿を見送った。

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