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「北氏が犯人であると、私は気づいていた」
しかし悔しい事に確証を得る事は出来なかった。翠里はそのままの体制で懺悔する。確証こそ無かったものの、白神家に由縁があり、しかも近しい者であると踏んだ翠里が調べたところ、行き着いたのが冬から見て叔母に当たる北氏であった。
事実、冬が生まれなければ直系である北撫子が白神家を継ぐ事になっただろう。それを恨んだ北氏が冬を殺すように自分の息子に命令したのだ。
だが撫子は雪を殺したのであって冬は生きている。
「私は、冬君を囮にした」
生きている限り再び現れるだろうと思って。翠里は言う。
本人にこそその事は言わなかったが、学園内の警備を強化したり、常に影ながら冬を守るように手配していた、
しかし甘かった。結局撫子が冬の前に現れた時、守る者はいなかった。更に結果的に守ったのは明で、怪我をさせてしまった。
翠里は考えが甘すぎたと深く頭を床に擦りつけた。
「…貴方の判断は正しかった」
静かに言い放った。冬は自分でも驚く程凪いだ気持ちで翠里を見ていた。
顔を上げるように言った冬を複雑な顔をして見上げる。冬は整いすぎた人形のような顔を崩した。
「貴方のおかげで犯人が捕まり、雪もきっと喜んでいます」
微笑み、椅子から立ち上がって深々と頭を下げた。漆黒の髪がサラリと頬にかかる。
「ありがとうございます。感謝しています、貴方にも…彼にも」
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