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「…風紀委員長も、僕の敵ですか」
「北、お前…!!」
鈍く明の血で赤色に光るナイフを構え、撫子はどんよりとした目で明を見やる。冬は血が付くのも構わずに明を抱きしめなふがら撫子をギッと睨んだ。息を荒くする明を見て、白いシャツを自ら破り止血しようとキツく縛った。
「…死ね」
いつの間にか冬のすぐ傍まで来ていた撫子がナイフを持った右手を振り上げる。
「―――そこまでだ」
誰かが撫子の腕を止めて手首に手刀を入れた。カラン、とナイフが地面に落ちる。そしてその手に手錠を掛け撫子を地面に押し付けた。
「救急車には連絡した。もうじき来るだろう。…君も着いてきてくれるかい?」
「あ、の」
「馬鹿息子がお世話になったようで済まないね」
「誰が、ばか、だ…っ」
翠里に言い返し、グッタリと体から力を抜いた。冬は青ざめたが翠里は「大丈夫、気絶しただけだから」とにっこり笑った。
その内に撫子は黒づくめの男達に連れて行かれて、この場にいるのは三人だけになった。
「ああ、来たね」
遠くからサイレンが聞こえて翠里は微笑んだ。そしてもう一度同じ言葉を口にする。
「着いてきてくれるかい?」
次は静かに頷いた冬に、翠里は目を細めるのだった。
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