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―――カサリ


 冬は休日であるのにも関わらず中庭に来ていた。いつもと違うのは私服を着ている事だろうか。真っ白のワイシャツにジーンズというラフな格好だ。
 特等席である木の幹に背中を預け目を伏せて微睡んでいた。木漏れ日が柔らかく冬を包んでいる。その情景は神聖なもののようにさえ思えるほど絵になっていた。


「…何の用ですか」


 少し前から気配に気づいていた冬は起き上がりもせず目を閉じたまま尋ねる。それが誰だか分かっていたからこそ。
 ピクリと体を震わせたのを空気で感じ取った。ゆらりと相手が冬に近付いてくる。


「…白神雪。貴方は何故生きているのですか?確かに殺したはずなのに」


 抑揚の無い声に冬は目を開く。少年がナイフを持って立っている。


「貴方がいなければ、僕達の家は―――!!」


 暗い瞳をギラリと光らせナイフを持ち突進してきた。冬は突然の事に動かない体に舌打ちをして目を瞑った。


―――ザンッ!


「…ってぇ」


 ボタボタと血が滴り落ちる。低い唸るような声が不機嫌さを乗せて発せられた。


「狩矢!?」


 冬は慌てて立ち上がり明の元へと駆け寄った。脂汗をかきながら明は歯を食縛って痛みに耐えている。

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