「誰だ!」
胸ぐらをつかんできた明を呆れた目で見る。だから言いたくなかったんだと一人ゴチた。
「座りなさい。全部話すから」
「…チッ」
手を離し座り直す明を見届けてやれやれと乱れた襟を正す。手帳の走り書きに視線を滑らせながら翠里は息を吐き出すように言った。
「その十数人の親を調べて、白神家と因縁がある、もしくは恨みのありそうな者を調べ上げた。確証は無いが可能性の高い人物に行き着いた。どれだけ考えても、その者に必ず当たる」
「…そいつの名前は?」
明は息を呑む。いつしか掌に汗をかいていた。
「―――" "氏だ」
その名前を聞いた瞬間、明は翠里の制する声をも聞かずに走り出した。
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