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「本人には聞いたのかい?」


 翠里が来たのは寂れた人気の無い公園だった。二つだけ並べられたベンチの片方に二人は並んで座る。


「ああ」
「なら平気だね」


 黒い皮の手帳を取り出した翠里は真剣な目で明を見つめた。


「一つ条件がある。事件について教えるという事は捜査に加わるという事だ」
「…上等」


 暗に協力しろ、という翠里の言葉に明は口角を吊り上げた。


「白神冬。彼はこの事件について詳しい事は知らない」
「確かにあまり知らない様だったが。何故だ、普通は知りたいだろうに」


 冬の様子と語られた話を思い出しながら、事件の核については全く触れられていなかった事を怪訝に思う。そんな明に翠里は珍しく悲しそうに微笑んだ。


「これは私の推測だが、信じれなかったのだろうと思うよ。否、信じたくなかったの方が正しいかもしれない」


 弟の死を。その言葉に納得するのと同時に複雑な心境になった。
 事件の詳細を聞く事で死というものが現実になってしまうのを恐れて遮断したのだろう。そして、それは今も。


「毒殺だったのが唯一の救いかな。雪君は本当に眠っているようだった」
「見たのか?」
「事件担当長は私だったからね。現場も葬儀も代表して奔走したさ」


 冬の様子を尋ねると、翠里は目を細めた。

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