「勤務明けにはコーヒーが一番だ」
「…また寝てないのか」
「私達は昼夜など関係無いからね」
飄々と言ってのけら翠里は「さて」と明の顔を見た。
「今日は一体何の用だい?」
すぅ…と表情をなくした翠里は凄まじい威圧を発する。慣れているはずの明でさえも息を呑む程だ。食えないオッサンではあるが、こういう所は尊敬していたりもする。
「白神冬、知っているな」
「もちろん」
「なら」
恐らく目の前の狐は、次に尋ねられる事を分かっているだろう。それなのに一切口を開かない。大した奴だ、と皮肉まじりに心中で呟いた。
「白神雪も知っているだろう?」
「何を知りたいんだい?」
「…性格悪いな」
しみじみと明が言ったのに対し、翠里は「褒め言葉だよ」と笑う。明は嘆息しながら唇を動かす。
「世間から隠された白神冬の双子の弟である白神雪を殺した事件の詳細を知りたい」
「どうしてか聞いても良いかい?」
「俺が白神冬に惚れたからだ」
畳み掛けて矢継ぎ早に言い放った明に翠里は目を丸くする。「おや」と呟いて珍しく感情の揺れを表した父をじっと見据える。
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