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「―――犯人は未だ見つからず、か」


 明は寮の自室で書類を見ながら呟いた。言わずもがな冬についてである。
 冬の双子の弟、雪が殺されたというのは今持っている紙切れ一枚だけにしか記されていない。それだけ外部に存在を知らせないようになっているということだ。
 雪に関しての資料の出処を見て明は舌打ちした。


「親父か」


 忌々しげに紙の一番下に書かれている名前、"狩矢翠里"を睨んだ。明の実の父親である翠里は秘密警察の立場上トップである。
 そんな父の名が書かれてあるという事は、この殺人事件は秘密課に依頼し隠密に調査されたという事だ。それも、全ての内容を把握しているのは翠里だけだろう。明は渋い顔をして携帯を取り出した。

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