11



 月日が経ち、冬と雪が10歳になったある日。唐突に事件は起こった。
 その日、たまたま冬は臥せていた。冬はよく体調を崩しがちで、その分雪は丈夫だった。風邪を引いて咳き込む姿は痛ましい。その傍で冬の様子を心配そうに見つめていた雪に後ろから声が掛かった。


「雪、冬の体調はどうだ」


 振り向けばそこには父。冬もうっすらと目を開けて父の姿を視界に映した。


「ぉ、とー、さま…」


 掠れた声で父を呼ぶ冬に、父は苦笑して傍に寄った。冬の頭をポンポンと撫でる。


「まだよろしくないようです…」


 冬と同じ漆黒の濡れた瞳を閉じた。やはり双子なのか、感情が移入しやすいようで雪は元気が無い。


「そうか」


 父は冬を撫でていた手とは反対の手で雪の頭を撫でる。不吉の象徴であると言われてはいるが、父を初め雪の存在を知っている者のほとんどは冬と同様に接していた。
 普通なら忌み嫌われるところではあるが、冬と同じ容姿、美しいからか、その殊勝な態度からか、寧ろ好かれていた。
 しかしやはり嫌う者も少なくともいるわけで、雪が蔑ろにされ、明白に冬を可愛がるような人物に会った時は、その者が去った後二人で身を寄せて美しい瞳を濡らし合った。
 幼心は敏感で、それでもその者の前では気丈に振る舞う二人であったが、心は痛くて仕方が無い。けれどこうして愛でてくれる方が多くいるからこそ、冬と雪は仲が良かった。

prev next

 



top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -