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 白神冬。彼の名字である「白神」は、誰もが知る大財閥のトップである。世界にも進出し、幾つもの事業に成功している。
 その世界的に有名な白神の、冬は本家の人間であった。それも直系の長男。生まれたその瞬間から彼は白神家を背負うことが決まっていた。それは当然の義務だった。
 冬は“長男”である。それは周知の事実であるし、真実である。しかし、本家にしか知られていない秘密があった。
 冬は『双子』であった。白神本家直系血族は二人いたのだ。白神冬、そして白神雪。
 白神家には古い風習があり、双子は不吉の象徴とされていた。その上、本家の跡取り争いになるといけないために、双子は良しとされなかったのである。よって双子の兄である冬は表向き、一人息子の長男とされ、双子の弟である雪は存在しないものとなっていた。
 しかしそれは表面上だけで、冬と雪は仲の良い兄弟だった。いつも傍にいて、一緒に遊んで、泣いて笑った。そうして過ごしていた。

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