07



「―――はぁ」


 再び定位置となりつつある裏庭の桜の木の幹に背中を預ける。愛らしい笑顔はどこへいったのか、暗い表情をしていた。冬が想うは、一人だけ。


「白雪姫、か」


 その名を持つのは僕ではない、と心中で呟く。愛しき自身の半身を思い浮かべる。


(今此処に在れば)


 懐かしむような、辛いような、寂しいような、色々な感情が綯い交ぜになった表情で空を見上げる。虚ろな目に映るのはどこまでも広がる空。
 そんな彼でも、絵になっていた。今にも消え入りそうな儚い雰囲気を纏い、憂う冬。常の可愛らしい姿とは正反対であろうその姿を、見ていた者がいた。

「―――白神」


 一瞬にして、纏う雰囲気がガラリと変わる。痛いほど鋭く強い視線で冬は自身の名を呼んだ男を睨み付けた。


「何をしに来たの…狩矢」


 瞳に宿る色と同等の声音で責め立てる。いつもならば声を掛けてくることさえない、この男。冬は訝しげに見やる。明は咎める声を無視し、ずかずかと冬の傍までやってきた。

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