06



「…へぇ、」
「っ、」
「な、なんだよ!!」


 明らかに不機嫌そうな笑顔に会長と夢香はもちろん周りもビクついた。しかし夢香はそれでも冬に食ってかかる。


「立場、ですか。貴方がそれを言いますか?」


 ねぇ?と冬はゆったりと会長に近づく。そして反射的に逃げようとする会長の耳に唇を寄せて囁く。


「―――こんな状況にしたのは、誰でしょうかねぇ」


 会長、そしてその肩越しに怯えた目で様子を見ていた他の生徒会役員にのみ聞こえる音量で言葉を吐き出した。ゾクリと肌が粟立つのを感じたのはその声を聞いた者だけ。
 ゆるりと笑んでみせてから冬は潔く離れた。周りは生徒会役員の異常に怯えたその様子に首を傾げている。


「遊ぶのもそのくらいにしておかないと、」


―――僕も怒りますよ?


 赤い唇で音は発さないまま言い放つ。唇の動きを読んだ生徒会役員は青褪める。微笑みながら、内心では心底愉しげに笑う。


―――パンパン


 冬は手を鳴らし、一つ区切りをつける。


「さて、皆様お直りください。此処はご飯を食べる処でしょう?早く食べないと時間が来てしまいますよ」


 その言葉で、静まり返っていた食堂内がざわめきを取り戻した。冬が口元に笑みを浮かべたままに目を細めるのを、撫子はじっと見つめていた。

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