05 オネエサマの登場



◇◇◇


 呼び出されたのは放課後だったため、今はもう廊下に人気は無い。窓の外から聞こえる部活動の掛け声にふと立ち止まって外を見た。そこには部活に打ち込む生徒らがいる。こうしてみれば普通の高校生なのに、と短く嘆息すると。


「怜ちゃんってばあ、遅いわよ」
「厳、重い」


 ずしりと背中に重みを感じてまた溜息を吐いた。


「重くしてるの!」
「はいはい」


 適当に頷いて巻きついた腕をペチペチと叩く。漸く離れたのを感じると振り返った。そこにはモデルかと見間違えるほどの美人が立っている。
 俺の数少ない友人の一人、野坂 厳は男らしい名前と程遠い顔立ちをしている。男と言われなければ女だと絶対思われるであろう絶対の美貌。そして、オネェ系である。普通なら俺も拒否するのだろうが、あまりにもその女性らしい顔立ちと口調に違和感が無いので仕方がない。


「で、何の話だったの?」
「編入生が来るんだとさ」


 俺の言葉に厳は眉を潜めた。


「それっておかしくない?途中編入は無理でしょう、この学校って」
「裏口入学らしい」


 厳になら言っても大丈夫だろう。言いふらすような性格でもない。


「何ソレ、有り得ない。俺の怜那は勉強頑張って来たのに」
「俺って言ってるぞ」
「あら、いけない私ったら」


 そんな厳に苦笑しながら、ふと思う。


「そういえば厳、待っててくれたんだ?」
「そう!怜ちゃんを待ってたのよ、はい鞄」
「サンキュ」


 厳から鞄を受け取って笑いかけた。


「おい、厳」
「怜ちゃんったら超可愛い!!」


 ギュウギュウと抱きついてくる厳を押しのけようとしても離れてくれない。厳も俺より背が高いため傍から見れば抱き込まれているように見えるだろう。それが嫌で抵抗するのに、厳は素知らぬ顔で引っ付いてくるし。
 今日はスキンシップがやたらと多い日だな、と肩の力を抜いて寄りかかるように身体を預けた。

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