「もう、いきなり何するんですか」
十数センチ上にある立花先生を睨む。身長差のせいで必然的に上目遣いになり、しかも眩しさから俺は今涙目だ。言っておくが俺は身長は低いわけではない、平均だ。170センチあるのに見上げなくてはならないって、立花先生はどれだけ長身なんだ。
半分八つ当たり気味にキっと睨み上げるとと溜息をつかれた。失礼だな。
「無自覚って恐ろしいな」
「無自覚?」
「俺が至って平凡なのは自他ともに知ってますけど」と言えば立花先生にクシャリと髪を撫でられた。立花先生がどことなく嬉しそうだから、払おうとして上げた手を大人しく下ろす。
「やっぱり望月は良いな」
「…何がですか」
「ま、あんまりライバルを増やしてくれるなよ」
だから何が、とは思ったものの答えは返ってこなさそうだったので口を閉じた。離れていく手を見届けて、俺は一礼して職員室を出たのだった。
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