03



「どうかしたか?」


 すっかり復活したらしい立花先生を見上げる。心配そうなその表情に、しみじみと良い人だなあと頷いた。


「親が息子のKYさに黙ってられなくて理事長に押し付けたんですって。厄介さMAXですね」
「それはどこ情報だ」
「理事長情報です」
「本人から?」
「はい」


 訝しげにする立花先生に、そういえば言ってなかったなと思い当たる。


「俺と理事長、茶飲み友達なんですよ」
「はあ!?」
「編入する際に理事長にお会いしましたら何故か気に入られまして」
「お前なあ」


 理事長ってスキンシップやたらと多いんだよな、などと思っていたら口に出ていたらしい。


「スキンシップって、お前それ明らかに」
「?」


 またもやぶつぶつ言い出した立花先生は「あー」「うー」と唸っている。


「…大丈夫ですか?」


 流石に俺も心配になり、下を向く立花先生を更にその下から覗き込む。するとピシリと固まった。と思えば、立花先生の頬にじわりと朱が走る。風邪か?とそのままの状態で首を傾げれば先生の手で目を覆われた。


「ちょ、先生見えないんですけど」
「あー、お前ちょっと黙っとけ」


 退かそうとしても退かない。両手でやってもピクリとも動かない大きな手に力の差を見せ付けられた。「別に俺の力が弱いんじゃなくて先生の力が強いんだ」とぶつくさ言っていると不意に目の前が明るくなる。いきなりの光に目を数度瞬くと視界がはっきりした。

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