「ありがとな」
佐々木がコクリと頷く姿が小動物のようで微笑ましい。そんな彼に和むのは必然だろう。ほんわかしていると高橋に横から小突かれた。
「オイ、そこで和んでるのはいいけど昼休み終わってんぞ?」
「え゛」
バッと教室の壁に掛かっている時計を見ると、すでに5時間目が始まっている時間。いつチャイム鳴ったんだろう。
「教師来てないぞ?」
「今日は自習だそうだ」
長谷川がサラリとそう答えた。だが、自習だとしてもプリントがあったりするのが普通だと思うんだけども。
「さっき先生来たけど、ドア開けた途端また閉めて帰っちゃったよぉ」
なんで!?と思ったもののすぐに納得した。おそらく、というよりも十中八九トラがいるからだろう。基本的にトラが教室で授業を受けることはない。出席日数は一体どうなった、と思うだろうがここFクラスは成績がとあるボーダーラインを超えていれば構わないことになっているのだ。
そのボーダーラインは50位以内であること。トラはそれを軽々と超えているため、授業に出る必要性がない。
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