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「あー、ずるいおれも撫でて!」
「…撫でてほしい、とか思ってないぞ」
清水は良いとして、長谷川ってツンデレだったか…?まあ兎に角意思に従い撫でてやると二人とも嬉しそうに笑うもんだからキュンと来た。可愛いな、こいつら。
「レイ」
「…久しぶりだな」
教室が驚くほど静まり返ったのを感じて、後ろから掛けられた声で確信した。
「レイから離れろ」
俺の事を”レイ”と呼ぶ唯一の人物。ぶわりと膨れ上がる威圧は俺にくっついている四人に向けられていた。対象が俺ではないにしろ、気を抜けば腰が抜けそうになる。
「やだよう。久しぶりに会えたのに!」
勇者が居た。馬鹿もここまでくると尊敬出来るわ、とクラスの一人が呟いたのに対して俺は心中で大きく頷いた。
「おい、清水。大嶺サンに反抗的な態度してたらぶっ飛ばされんぞ」
「だって嫌なもんは嫌なんだもん」
ぷいっとクラスの奴から顔を背けた清水。凄く背後が寒いんだが。原因はトラしかいない。
「レイは俺のもんだ」
「そんなこと聞いていないが」
思わずつっこんでしまった。俺はトラのものになった覚えは更々無い。
「俺がお前の名を呼んだ時点で俺のものだ」
「…何その俺様理論」
とりあえず俺は俺のものだという旨を告げたら眉間に皺を寄せられた。いや、何でだよ。ていうかこのやり取りの間でも清水に限らず四人とも俺から離れないって本当に度胸あるよな。
「とりあえず俺は俺のもんだ。暑いからさっさと離れろ」
ベリっと四人を剥がす。不満を口に出していたがそんなものは無視に限る。今日は別に遊びに来た訳ではないのだ。トランプしていたのは気のせいという事にしておいて、だ。
「テストまで後十日程だが、勉強はいつからにするんだ?」
「あー本当にテスト近いのか」
高橋が嫌そうに顔を歪めて頭をぼりぼりと掻く。テストが好きな奴なんてそうそういないだろうけど。
「…明日」
佐々木がポツリと呟いた。明日から勉強会をする、という事だろう。いつもなら一週間前から勉強会を始めるのだが、どうやら佐々木はやる気があるみたいだ。
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