02



「編入生?」
「そんな絶望した顔すんなよ望月」


 言い忘れていたが、俺は望月怜那という。そしてホストみたいなこの男は俺の担任で立花誠一だ。


「厄介そうな予感がしたから一応報告な」
「やっかい」
「裏口入学らしい」


 まさか、とは思うが。


「理事長の身内ですか」
「親戚だとよ」


 はぁ、と留められなかった溜息を吐く。ここまで王道だと何も言えまい。理事長は食えない人だが誠実だと思っていたのだけれど。
 俺はおもむろに携帯を取り出して操作し始めた。教師ではあるけれど、相手は立花先生だし咎められることはないだろう。


「…お前なぁ、仮にも教師である俺の前で携帯出すか?」


 呆れた声音に携帯から顔を上げて立花先生と目を合わせる。


「でも、取り上げはしないでしょう?」


 にっこりと微笑むと、立花先生は苦く笑った。


「まぁ、な」
「そういうところ、俺好きですよ」


 「おま、それは殺し文句だろ」とかぶつぶつ言うのを無視してまた画面に視線を落とす。てい、と心の中で呟いて送信すると、「送信しました」の文字が浮かび上がった。それを確認してからまた再び顔を上げると薄く頬を赤くした立花先生と目が合った。


「照れてるんですか?」
「…うるせぇ」


クスクスと俺が笑うと、立花先生に睨まれた。赤い顔で睨まれても迫力無いな、とか考えていると携帯が振動したので慌てて開く。長々と並ぶ文字の羅列に、この短時間でこれだけ打てるなんて凄いなあと関心しながら走り読みする。
 読み終えて思わず嘆息した。文字の羅列の中には節々に厄介な問題点とそれから7割は恐らく俺への嫌がらせである愛の言葉が書いてあった。嘆息の理由は言わずもがな両方だ。何を考えてるんだか理事長は、と再び吐く息は止められそうにもなかった。

prev next

 



top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -