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「賢い子は嫌いじゃないよ」
言ってみなさい、と目で言われて渋々口を開く。
「つまりいつでも来いということですか」
「ピンポーン」
いや、棒読みで言われても。というか意外と湊さんってお茶目なんだな。
「自由に出入りしていいよ。まあそれ以外でもそのカードがあれば何かと便利だから持っておいて損はない」
「そりゃそうですけど」
むしろ利益ばかりだ。そんなカードをもらっても俺にどうしろと言うのだろうか。
「これから恐らく怜那は色々と巻き込まれるだろうからね」
「その確信はどこから」
「君の性格ゆえだよ。後は勘かな」
「そんな勘信じたくないです」
「まあそうだろうけど。とりあえずそれは肌身離さず持っておくこと」
「はい」
「後、そのカードキーから食費でも何でも使えば良い」
「え」
「私の口座だから心配はいらないよ」
え。開いた口が塞がりませんが。
「そんなもの貰えません!」
「いいんだよ。報酬なんだから」
「でも」
「黙って受け取りなさい」
笑顔の重圧を受けた俺は大人しく引き下がることにした。あの人は悪魔というか、魔王だと思う。
◇◇◇
まあそういった経緯で補習をすることになり、更には恐ろしいブラックカードを受け取ることになったのだった。そう言われてみればあの日から湊さんが黒モード全開になったんだよなぁ。
「理事長に頼まれたんだ?」
「いや、あれは脅しだ」
委員長の言葉に俺は即答する。苦笑いする委員長に俺は溜息をついた。
「さて、行ってくるな」
「うん。いってらっしゃい」
勉強道具を片付けて俺は教室を後にした。もちろん、可愛い教え子たちに会うために。
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