01 王道ルート始動



 いきなりだが、俺が通う秋花(しゅうか)学園は所謂「王道学園」だそうだ。全寮制の閉鎖された男子校に通うのは、親から悪い虫がつかないようにと放り込まれた金持ちの子息ども。物心ついた頃から周りが男だらけじゃあ恋愛対象が男に行っても仕方が無いとは思う。が、俺はやりすぎだと考えるのは普通ではないのだろうか。
 腐女子である姉と幼馴染に強制的に読まされた小説そのままだった。俺は高等部からの編入だから、最初校舎やら校内やらを見て歩いた時は呆然となったものだ。二次元の世界、というよりも小説や想像(妄想?)の世界だと思っていたから、まさか現実にこんなイカれた学校があるなんて思いもしなかった。
 案の定ホモやらバイやらが生徒内、いや寧ろ学園内と言っても過言じゃない、9割以上なのだという。生徒会は揃いも揃って美形であるし(抱きたい?抱かれたい?ランキングがあるらしい)、風紀は寧ろお前が風紀乱してね?な感じの不良揃いだ。もちろん顔の良い奴には親衛隊もある始末。 学園の現状を知った時、俺は思わず頭を抱えた。何故此処に来てしまったのだろう、と。まぁ、なんというか就職に有利でしかも偏差値が高かったからなんだが。
 俺はもちろんノーマルで、身内やら周りにそういうの(BL)が好きな奴らがいることだし偏見はあまりないが、だがしかし2回言おう、俺はノーマルだ。それに俺は平和に過ごしたい。
 幸いな事に、俺は平凡だった(この学園じゃ不細工の部類に入るかもしれんが)。この学園では持ち上がりのエスカレータ式だから外部の者は滅多に来ない。編入当初は注目さえされたが、この平凡顔のおかげで興味も持たれずすぐに他の関心へと目を向けてくれたため、入学してから此処1年は平穏に過ごすことが出来た。
 「出来た」。そう、過去形である。俺は平和すぎて失念していたのだ。此処がまさに小説の中の世界で「王道」であることを。
 丁度今、俺の平和な日常は終わりを告げられた。目の前のこの男によって。

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