39 優秀と腹黒は紙一重
◇◇◇
「テスト週間?」
あの宴会の日から少し時間が経過した。相変わらず王道編入生、もといマリモはウザいままであるし、自棄に顔の良いその信者も変わらない。
一つ変わったのは、クラスメイト全員が俺の手助けをしてくれるようになったことだろうか。先程もまたマリモに絡まれて信者共に睨まれていた俺を学級委員長が助けてくれた。そうして安堵の息を吐き出した俺は、後ろの黒板に張り出されたプリントに書かれてある言葉を思わず口にした。
「今週からだったね」
俺の声に律儀に返してくれた委員長がプリントを見やる。あまりにも忙しくて忘れていた。そう言われればそんな時期だな、と俺は頷く。
秋花学園では前期後期制で、前期の中間・期末と後期の中間・期末、それぞれ二度ずつだ。腐ってはいても此処は進学校な訳であって。授業の速度は速いし内容も濃い。テスト範囲は恐ろしく広いし、しかも成績によってクラスが分けられるのだから気は抜けないのだ。
「…勉強しなきゃだな」
一応コツコツと日々勉強しているつもりだが、強化しなくては駄目だろう。気合を入れると同時に少しだけ気が重くなる。
「いや、望月はやらなくてもいいと思うよ」
「何で?」
言葉の意図を量りかねて説明を求めるように委員長を見つめる。すると委員長は肩を竦ませて苦笑した。
「たまには主席を譲ってくれない?」
「拒否する」
「あ、やっぱり?」
即答した俺に委員長は朗らかに笑った。俺は主席、委員長は常に次席か三席を彷徨っている。委員長には委員長なりに努力しているのだろうが、俺にだって譲れないものがある。それについては委員長も分かっているのだろう。何も触れずに話題を変えてくれた。
「ところで望月に教えてほしいところがあるんだけど」
問題集を手にして俺の前で振る。
「いいよ、どれ?」
「えっと」
パラパラとページを捲るのを意味なく見つめる。大体は俺が教える側になるが、俺だって委員長にたまに教えてもらうから相子だな。
「あ、これ」
「ああ、これはな」
◇◇◇
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